北海道発!「ローカル旅行」の楽しみ方から予約まで
更新:2022年04月27日
洞爺湖の南に位置する活火山・有珠山(うすざん)と、その噴火によりわずか2年あまりで出来た山・昭和新山。歴史を知れば、その眺望はさらに魅力的になります。時間をかけて、さまざまな角度から楽しんで。
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有珠山(うすざん)は、洞爺湖の南に位置する標高733メートルの活火山で、東日本火山帯に属します。約11万年前に大きな火砕流の噴火によってカルデラができ、そこに水が溜まり現在の洞爺湖が形成されました。約2万年前から断続的に火山活動が起き、洞爺湖の南側に有珠山が誕生したと考えられています。19世紀までに5回、20世紀に4回の噴火を記録、近年では昭和52年(1977)、そして平成12年(2000)に噴火しました。 有珠山は支笏洞爺国立公園に属していて、洞爺湖・有珠山地域は、生態学や文化的に貴重な遺産も含んだ地域として、平成21年(2009)に世界ジオパークから認定されました。ここにある有珠山ロープウェイは、山麓駅から頂上付近の山頂駅まで片道約約6分、1370メートルのロープウェイです。ロープウェイに乗ると、眼下に洞爺湖や昭和新山を見ることができます。また、有珠山ロープウェイ山麓駅には昭和新山火山村が併設されており、音と光と映像で噴火を再現する「噴火体験室」でマグマの湧き上がる迫力のシーンを体感できますよ。 昭和新山は、昭和18年(1943)の有珠山噴火により、何もないところから畑が隆起し、わずか2年あまりで出来た標高398メートルの寄生火山ですが、温度低下や浸食などのため年々縮んでいます。昭和32年(1957)には国の特別天然記念物に指定されました。 誕生成長過程は壮瞥郵便局長であった三松正夫(みまつまさお)氏により克明に記録されています。有珠山の明治43年(1910)の噴火により北側山原に明治新山が生じてから33年間、有珠山は休止期に入りました。しかし、昭和18年(1943)の末頃から地震が続発。昭和19年(1944)の1月には麦畑が隆起し、「屋根山」と呼ばれる丘が出現。その年の6月~10月に有珠山は爆発を繰り返し、11月中旬、屋根山の中央部に新溶岩を押し出し始め活動が停止しました。昭和20年(1945)9月には標高398メートルの新山が誕生し、これが昭和新山となったのです。 この記録は「万国火山会議」に提出され、ミマツダイヤグラムと名付けられ、多くの専門家に絶賛を受けました。また、三松氏は世界的にも貴重な昭和新山の保護と昭和新山誕生のため家や農場をなくした住民の生活支援のため、私財をなげうち昭和新山のある土地を買い取りました。このため、昭和新山は世界でも珍しい私有地内にある火山です。学術的にも貴重な山であり、日本の地質百選に選定されています。最高地表温度が約300度の活火山で山肌は茶褐色。岩肌からは今も水蒸気を上げています。 有珠山と昭和新山、これら壮瞥町(そうべつちょう)の火山は災害をもたらすと同時に、特異な景観や豊富な農産物、そして温泉などの自然の恵みを授けてくれる「恵みの山」でもあるのです。 有珠山を楽しむなら、まずはロープウェイで山頂へ。昭和新山の麓、昭和新山火山村内にロープウェイの山麓駅があります。2階がロープウェイ乗場となっていて、15分間隔で運行。106人乗りの大型ゴンドラで揺れは少ないので、乗り物が苦手な人でも大丈夫。乗車後、右手に昭和新山の姿を眺めていると、やがて前方に巨大な洞爺湖が見えてきます。北海道らしい雄大な景色に見とれ、6分ほどであっという間に山頂に到着します。 季節により魅力ある景色が楽しめますが、特に、ロープウェイから見る紅葉の景色は必見。大雪地方や札幌の定山渓などに比べ有珠山は紅葉のスポットとしては有名ではありませんが、10月中旬の紅葉の時期はおすすめです。イタヤカエデなどを中心として中腹から麓にかけて全体が黄色に包まれ、所々に見られるナナカマドなどの赤も鮮やか。 春にはエゾヤマザクラと新緑のコントラストが美しく、冬には山全体が真っ白な雪に覆われます。 また、春から初夏にかけて朝方は霧が発生しやすいので、タイミングがあえば眼下に広がる雲海を見られる可能性もあります。展望台は眼下に流れる雲海を望むのにぴったりのスポットですよ。 ロープウェイ山頂駅を出てすぐ目の前には有珠山山頂の荒々しい山肌が広がり、噴火を繰り返してきた火山の迫力を体感できます。さらに、右手に少し進むと「洞爺湖展望台」が。ここは、洞爺湖と昭和新山を見下ろす絶好の撮影スポット。 現在はここから羊蹄山を見ることができませんが、昭和52年(1977)の噴火以前は見ることができました。それほど大きな変化があったという歴史を知ると、見え方が変わってきます。 帰りのロープウェイを待つ間は、山頂駅の中にある「山頂防災シアター」を見てみましょう。20世紀の間に4回も噴火しながら、有珠山は噴火災害の犠牲者が少ないことでも知られています。噴火の歴史や防災の取組みについて紹介する映像・パネル展示があり、活火山としての有珠山の姿を学ぶことができますよ。
時間に余裕がある人は、少し足を伸ばして外輪山遊歩道を散策してみましょう。ロープウェイの山頂駅から7分ほどのところにある「有珠火口原展望台」から「有珠山外輪山展望台」までは、往復約2時間程度の道のり。外輪山展望台からは有珠山の噴火口をより近くで見ることができるほか、洞爺湖と太平洋も一望できます。途中、269段の階段があるので、帰りの方が大変ですが、普段からウォーキングなどをしている方であれば問題なく楽しむことができますよ。 外輪山遊歩道は昭和52年(1977)の有珠山噴火以来27年間立ち入り禁止となっていましたが、平成16年(2004)にそれまであったロープウェイ駅の山頂駅から「火口原展望台」までの遊歩道に加え、「有珠登山道合流地点」までの遊歩道(1.1キロ、徒歩で片道約30分)が完成し、現在は散策できるようになっています。遊歩道の入口にある案内板の記述によると、昭和52年の噴火以前は今の河口付近は木々が生い茂り、湖があって子どもたちもよく遊んでいた場所。また、噴火前後の山の写真も掲載されており、いかに短時間で大きな景色の変化があったのかがよくわかります。チェックしてから歩いてみると、ダイナミックな大地の動きをさらによく体感できるはず。比較的短時間のトレッキングで、整備された道ではありますが、歩きやすい靴と雨具などの用意は忘れないようにしましょう。
有珠山ロープウェイの乗り場があるのが「昭和新山火山村」。ここは食事や買い物を楽しめる複合施設となっています。 レストラン「噴火亭」は、地場産品にこだわったメニューを多く用意しているおすすめのグルメスポット。メニューのひとつ「溶岩揚げ野菜カレー」(1480円)は、溶岩をイメージした特性ルーに、有珠山の恵みで育った地元伊達産の季節野菜をトッピングした味と彩りの豊かな一品です。また別棟で提供している「火山ラーメン」も観光客に大人気。スープには味付けタマゴを素揚げして、溶岩に見立てた「溶岩タマゴ」が浮かび、チャーシューは伊達(だて)産のホエー豚が使われています。 牛肉のほか、野菜や果物なども地元洞爺湖周辺の素材にこだわったメニューを提供。洞爺湖周辺では、水はけの良い火山灰の土壌が美味しい農産物を生み出しています。ロープウェイで有珠山・昭和新山の壮大な景色を楽しんだ後は、舌でも火山の恵みを味わって。 噴火亭の営業時間は、11時~15時。ランチにおすすめのスポットです。 買い物には、ロープウェイ乗り場に併設されている「火の國屋本舗」、山麓駅近くにある「セレクトショップ」、「村のコンビニ」などがありお土産は充実。洞爺湖名物の「わかさいも」をはじめ、旬の土産品まで揃っています。火の國屋本舗は8時~17時30分、セレクトショップと村のコンビニは9時~17時30分までの営業です。 「村のコンビニ」では、施設自慢のソフトクリームも各種販売。休憩できるテーブルやベンチが多いのもうれしいポイントです。
洞爺湖・有珠山地域は、平成21年(2009)に日本で初めて世界ジオパークに認定されました。 ジオパークとは、学術的・景観的に貴重な地質遺産を人類共通の遺産として保全するもの。多くの特徴的な地質・自然に加え、度重なる噴火の試練を乗り越えた住民活動があること、さらにアイヌ文化や縄文文化などが残っていることが評価されています。 地元では「火山マイスター」と呼ばれる人たちが子どもたちや訪れた人たちに噴火の歴史や防災の知識をはじめ、火山が作り出した地域の魅力を伝える取組みを行っています。次に噴火が起こった時に活躍できる人をひとりでも多く育成することが目的。有珠山ロープウェイでは、実際に火山マイスターのガイドと一緒にロープウェイで山頂に行き、展望台や火山村にあるジオパーク情報館などでの解説を聞くことができる案内ガイド付き学習コースも用意しています(15名以上、要事前予約)。 その他にも洞爺湖周辺では、17のガイド団体が、湖・山・まちなどそれぞれのフィールドでガイド付き散策、カヌー・乗馬体験、クラフト体験を実施しています。また冬季にはスノーシュートレッキングなどさまざまなメニューを提供。洞爺湖周辺の景観・温泉・野菜や果物などの食を通し、地球の大きな動きがこの地域の恵みにつながっていることが体感できるプログラムです。
有珠山周辺には、併せて訪れたい魅力的な施設が数多くあります。 「三松正夫記念館」は、2年あまりで誕生した奇跡の山「昭和新山」を深く知ることができる施設。昭和18(1943)~20年(1945)、有珠山の噴火により、何もない畑作地が隆起して昭和新山となりました。三松正夫氏は、明治45年(1912)から昭和28年(1953)まで壮瞥郵便局長を務めた人物。彼はその山の成長を経過を記録・スケッチを続け、ひとつの表にまとめました。これは、「ミマツダイヤグラム」と呼ばれ、世界的にも貴重な資料となっています。 三松正夫記念館では、この「ミマツダイヤグラム」の原図の他、生涯3度の噴火を体験した三松氏の貴重なスケッチや写真等を多数展示しており、先人の偉大な業績に触れることができます。時間をかけてじっくり見るのがおすすめです。 三松正夫記念館(昭和新山資料館) 【住所】有珠郡壮瞥町字昭和新山184-12 【営業時間】4月~10月 : 8時~17時11月~3月 : 9時~16時 【定休日】冬季不定休 【入館料】大人:300円、子ども:250円 【問い合わせ(TEL)】0142-75-2365 「洞爺湖有珠山ジオパーク火山村情報館」は、昭和新山火山村内にある洞爺湖有珠山ジオパークについて学べるスペース。入って奥にある過去の有珠山の噴火の大きな写真パネルが目を引きます。 平成21年(2009)に、日本で初めて世界ジオパークに認定された、洞爺湖有珠山ジオパークのテーマは「変動する大地との共生」。度重なる噴火とともに暮らしてきた人々の知恵や工夫を知ることができるほか、「温泉」「おいしい食」「美しい景色」など、火山が与えてくれる自然のさまざまな恵みについても触れており、ジオパークとは何か、またその魅力や見どころをわかりやすく紹介しています。建物内には音と光と映像で噴火を再現する「噴火体験室」もあり、無料で観覧できますよ。 洞爺湖有珠山ジオパーク火山村情報館 【住所】有珠郡壮瞥町字昭和新山184-5 【問い合わせ(TEL)】0142-75-2401 【営業時間】8時~18時(季節により変動あり) 【公式サイト】 http://usuzan.hokkaido.jp/ 「そうべつ情報館i(アイ)」は、壮瞥町の特産のくだもの・野菜等を販売する直売所のほか、観光情報案内、火山とともに生きる町の歴史を紹介する「火山防災学び館」が併設されている道の駅。 88台の広い駐車場がある2階建ての施設で、観光情報案内、「洞爺湖・有珠山ジオパーク」に関する情報提供を行っています。また、農産物直売所サムズでは、地元の特産であるりんご・ぶどう・さくらんぼなどの果物や、季節ごとの採れたての野菜などの他、ジャム・お菓子・ジュースなどの加工品を多数販売しているので土産選びにも適したスポット。喫茶コーナーもあり、りんごジュース(210円)などを味わえます。 そうべつ情報館i(アイ) 【住所】有珠郡壮瞥町滝之町384-1 【問い合わせ(TEL)】0142-66-2750 【開館時間】9時~17時30分(4月1日~11月15日)、9時~17時(11月16日~3月31日) 【休館日】年末年始、毎週火曜日
有珠山ロープウェイ 【住所】北海道有珠郡壮瞥町字昭和新山184-5 【営業時間】8時~18時(季節により変動あり) 【ロープウェイ料金/往復】大人(中学生以上)1800円、子ども900円 【駐車場】あり/乗用車400台(駐車料金:1日/500円) 【問い合わせ(TEL)】0142-75-2401 【公式サイト】 http://wakasaresort.com/usuzan/
車で(レンタカーで)
札幌市街から国道230号線を経由し、約110キロ、約2時間30分。新千歳空港から道央道・千歳IC~伊達IC、国道453号線を経由し、約155キロ、約2時間。
電車&バスで
JR洞爺駅から道南バス「洞爺湖温泉行き」に乗車、約15分で終点「洞爺湖温泉バスターミナル」下車。 道南バス「昭和新山行き」に乗り換え、約15分、終点下車。 ※冬期間は運休
宿泊施設はありますか?
有珠山・昭和新山にはありませんが、車で15分ほどのところに洞爺湖温泉があり、多くの宿泊施設があります。火山の恵みのひとつである温泉をぜひ楽しんでください。
服装の目安は?
標高733メートルの有珠山の山頂では山麓と約5℃ぐらいの気温差があります。春・秋などは山麓よりも暖かい服装(長袖のジャケットなど)、冬はダウンジャケットなどのしっかりした防寒装備が必要です。また、山頂のとくに火口原展望台までは、やや急な階段もあるので、トレッキングシューズなど歩きやすい靴がおすすめです。
有珠山ロープウェイはバリアフリー対応していますか?
乗り場までは各所にスロープが設けられており、ロープウェイ乗降時もスタッフがスロープを設置します。また、山頂の洞爺湖展望台は段差もないため、車いすでの見学が可能です。
有珠山ロープウェイではガイドを受けることはできますか?
案内ガイド付き学習コースがあります(15名以上、要申込み)。ガイドと一緒にロープウェイで山頂に上り、ふたつの展望台で有珠山や昭和新山の成り立ちや火山の仕組みについて学ぶ、という内容になっています。